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AfDとリベラルの対立構造

ドイツの連邦議会選挙では、反移民を掲げるAlternative für Deutschland(ドイツのための選択肢)が得票率12.6%で709議席中94議席を占める第三党になりました。

AfD躍進の最大の要因は外国人の増加ですが、2016年のドイツの人口約8200万人に占める移民系の割合は22.5%で、2006年から5%ポイント増加しています。そのうちヨーロッパ系が15.2%、中東・アフリカ・南アジア・東南アジア(≒イスラム系と黒人)が4.8%、その他が2.5%です。外国人は出生率も高く、2015年の合計出生率は1.95とドイツ人の1.43を大きく上回っています。*1

このような人口動態に脅威を感じている人の多くがAfDに投票したと見られます。

AfDの得票率を16の州別に比較すると、ベルリンを除く旧東ドイツ5州が上位を占めています。ドレスデンライプツィヒのあるザクセン州では27.0%で、26.9%のCDUを上回る第一位です。*2

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議席を獲得した他の五つの党とAfDの得票率を州別に比較します。 

緑の党

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自由民主党

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社会民主党

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キリスト教民主同盟キリスト教社会同盟

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左翼党

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「極右」とされるAfDですが、最も近いのは左翼党で対極にあるのが緑の党、続いてリベラルの社会民主党ネオリベラルの自由民主党です。この構図は、フランス大統領選挙におけるルペンとメランションの反マクロンアメリカ大統領選挙におけるトランプとサンダースの反クリントンと似ています。

トランプ米大統領は19日の国連演説で

Our government's first duty is to its people, to our citizens, to serve their needs, to ensure their safety, to preserve their rights, and to defend their values. As president of the United States, I will always put America first. Just like you, as the leaders of your countries, will always and should always put your countries first.

と述べましたが、

誕生から8カ月が経過したトランプ政権の特徴は、国内外の問題において、さまざまな方法を駆使してトランプ大統領を動かそうとする、世界主義者(グローバリスト)と国家主義者(ナショナリスト)の顧問たちが繰り広げるドラマチックな主導権争いだ。

「現政権の最たるナショナリストはドナルド・J・トランプ氏だ。彼は自分が言わんとしていることを自覚している」と語るのは、トランプ大統領を支持するニュート・ギングリッチ元米下院議長だ。

ドイツ人(の厚生)第一主義のAfDがリベラルと対立するのは、リベラルが必然的にグローバリストになるためです。「もはや国境や国籍にこだわらない」リベラルの理想は、ドイツでドイツ人が過半数を割り、ヨーロッパではヨーロッパ人が過半数を割ることです。*3

それを「集団自殺」とするなら、自殺を止めようとしているのがAfDなどの極右政党ということになります。*4

The Strange Death of Europe: Immigration, Identity, Islam

The Strange Death of Europe: Immigration, Identity, Islam

Europe is committing suicide. Or at least its leaders have decided to commit suicide. Whether the European people choose to go along with this is, naturally, another matter.

I mean that the civilization we know as Europe is in the process of committing suicide and that neither Britain nor any other Western European country can avoid that fate because we all appear to suffer from the same symptoms and maladies. As a result, by the end of the lifespans of most people currently alive Europe will not be Europe and the peoples of Europe will have lost the only place in the world we had to call home.

日本も衆議院総選挙に突入しますが、AfDやトランプのような「自国民の厚生が第一」の政党が事実上存在せず、与野党揃って過激な新自由主義を競うというどうしようもない状況が続きそうです。

totb.hatenablog.com

totb.hatenablog.com

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付録

冷戦終了・バブル崩壊後の日本の政治の大雑把な移り変わり

日本改造計画

日本改造計画

小沢一郎 - Wikipedia

ここで提示された軍事面も含めた積極的な国際貢献新自由主義的な経済改革、政権交代可能な二大政党制を可能とする政治改革といった主張は、1990年代以降の政治課題の多くを先取りしたものだった。

  1. 日本新党新生党などのネオリベラル新勢力(主に自民党内の「改革派」)が「古い自民党」を批判して政権奪取。
  2. 橋本龍太郎首相が緊縮財政や金融ビッグバンなどネオリベラル色の濃い「六つの改革」に着手。
  3. ネオリベ全開の小泉政権が国民の熱狂的な支持を受けて誕生。
  4. 郵政ガリレオ選挙で「古い自民党」勢力を粛清。
  5. 自民党ネオリベ化により、野党との「改革競争」がエスカレート。
  6. 民主党政権では菅首相が「第三の開国」とグローバリゼーション一直線へ。
  7. 第二次安倍政権が「国民主権から株主主権」への革命の総仕上げに着手。

新しい国へ 美しい国へ 完全版 (文春新書 903)

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安倍首相が欧米のリベラルのように「自国民よりも外国人を優遇」に邁進していることは明らかです。

安倍首相を「極右」と非難する人がいますが、それはとんでもない勘違いで、ドイツであればAfDの対極に位置するリベラルグローバリストです。リベラルと外交タカ派は矛盾しません。*5

追記

ドイツがリベラリズムによって統一されていないことが、AfDの得票率の東西差に示されています。共産主義という「予防接種」がリベラリズムに対する免疫を作り出していたようです。

*1:Source: Destatis

*2:グラフの上から5つと6番目のベルリンの半分が旧東ドイツ

*3:AfDはやや過激化していますが、元々の主張は「エアハルトの奇跡」を支えた社会的市場経済への回帰など、冷戦期であればドイツ社会の常識とされていたものが大半です。

*4:反移民が旧東ドイツポーランドハンガリーなど旧共産圏に根強いことは、共産主義リベラリズムによる「自殺」を防いでいたことを示唆します。

*5:日本の左派が「極右」と呼ぶ勢力は「日本版ネオコン」というのが妥当です。本家アメリカのネオコンの別称は「リベラル介入主義者」です。