松尾匡が相変わらずおかしなことを言っています。
【新着記事】左派・リベラル派候補がアピールすべき要点/松尾匡 / 経済学 https://t.co/aRb9zPFQDQ
— SYNODOS / シノドス (@synodos) 2017年10月16日
【New】若い世代ほど自民党が高い。これは若者の保守化なのでしょうか?それとも、安定した雇用と景気を欲する意志のあらわれ?本当の課題を読み解きます。(石戸諭 @satoruishido)https://t.co/Mt9hNLsHyl
— BuzzFeed Japan News (@BFJNews) 2017年10月17日
「日銀の緩和マネー」についての誤りは過去記事で検証済みなので、ここでは
国債の四割以上は今、日銀が持っています。そのうち、将来インフレが高まったときにそれを抑えるために売りに出したりする分を除けば、残りは民間に出ていくことなく、期限がきたら永遠に借り換えして、政府がおカネを返すことなく日銀の金庫の中に存在し続けます。
[・・・]要するにその分は国の借金が消えてなくなっているとみなすことができるのです。
について取り上げます。
まず、日銀が国債を買うと国の借金が消えてなくなるという主張ですが、実際は政府の負債(国債)が日銀の負債(日銀当座預金)に置き換わるだけで、政府と日銀を統合すると負債額は変わりません。
次に、日本銀行が保有する国債は借り換えできるが、民間が保有する国債は増税して償還しなければならないとの主張ですが、個々の国債は償還しなければならないものの、新たに国債を発行してまた民間に買い取ってもらえば事実上の借り換えであり、「本当に返す必要」はありません。
松尾やクルーグマンや井上智洋は、巨額の財政支出のために発行する国債は日本銀行が買い取ってマネタイズしなければならないと考えているようですが、民間だけでも十分にファイナンス可能であることは、最近の需給動向からもほぼ明らかです。*3
財政再建の議論で重要なのは、政府と民間では「破綻」の意味が根本的に異なることです。
自国通貨を持つ政府は国債発行によりリスクフリー金利で資金調達可能なので、名目ベースでの償還は必ず実行できます。しかし、国債累増に伴うマネーストックと需要の増加に供給力が追い付かず、物価が急騰してしまう場合は、実質価値が著しく毀損した償還になってしまいます。このように国債が紙屑になるのが財政破綻です。
このことは、財政破綻を回避するために最も必要とされるのが供給力の増強であることを意味しています。そのためには政府のインフラ投資や民間設備投資喚起が効果的です。
しかし、1990年代後半からの構造改革で進めてきたのは、
- 公的固定資本形成の半減
- 企業に資本効率重視経営を迫ることで、国内投資から海外投資へのシフトを促進
と、完全な逆方向です。
上のグラフの拡大版。
左派・リベラル派でなくても、日本国民の生活と日本の未来を最重要視する候補であれば、
- インフラ投資の拡充
- 企業の海外投資を国内投資に反転
がアピールすべき要点になるでしょう。
松尾の誤りについては下の記事で検証していますが、なぜこんなに売れっ子なのでしょうか。
補足
いわゆる「高橋財政」では日銀が国債を引き受けましたが、
- その後大部分は市中に売却されたため、国債残高増加分のうち日銀の資産になったのはごく一部。
高橋財政における日銀の役割は、大量の国債発行を円滑に処理するための「調整池」となることであり、国債の最終的な保有先ではありません。
なぜ「拡張的財政政策のための国債発行は、日銀の半永久的な量的緩和(あるいはマネタイゼーション)でファイナンスするべき」という珍妙な考え方が広まったのか不思議です。