Think outside the box

夏眠中|I shall return.

[グラフ]日独仏英の選挙比較

今年の日独仏の議会選挙の得票と議席の配分を比較します。 

ドイツは小選挙区比例代表併用制(阻止条項付き)なので、得票率5%のハードルをクリアした政党の得票率と議席獲得率が同じです。 

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フランスは小選挙区単記2回投票制なので、得票率と議席獲得率が一致しません。今年の選挙では、マクロン新党の共和国前進の有利に、国民戦線の不利に働きました。

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小選挙区制のイギリスでは、第一党の保守党にやや有利な結果です。

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日本の衆議院選挙は小選挙区比例代表並立制です。小選挙区では、自民党が1/2%弱の得票で3/4の議席を獲得しています。*1

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投票者の本音は小選挙区よりも比例代表に反映されると考えられるので、比例代表の得票率と全体の議席獲得率を比較します。

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自由民主党は1/3の得票率で6割超の議席を獲得しています。ドイツと日本の第一党と第二党の得票率はほぼ同じですが、議席獲得率は大違いです*2

もちろん、選挙制度が変われば政党と候補者の行動も変わり、得票も変わってきますが、これほど大きな乖離が生じていることからは、日本の衆議院選挙制度が国民の意見を反映させるという基本目的の達成に失敗していると言わざるを得ません。*3

この第一党(事実上、自民党)を極端に有利にする選挙制度の下では、野党は正攻法ではなかなか政権を奪えないため、主張がどんどん過激化していきがちです*4。議員も「コアでマニアックでオタッキーパラノイアックで絶叫調な」支援者の「ヒステリックなご意見に引きずられて」、ボリュームゾーン無党派層から見放されていくことになります。*5

business.nikkeibp.co.jp

昔から、編集畑では、

「そういう特殊で、コアで、マニアックな人たちの意見に引きずられて編集方針をシフトすることは、雑誌にとって命取りになるのだぞ」

という意味の教訓が繰り返し申し伝えられていたのだが、どっこい現場は影響を受けるのである。

事実、それらの、コアでマニアックでオタッキーパラノイアックで絶叫調なハガキライターさんたちのヒステリックなご意見に引きずられて、幾多の雑誌が発刊当初のスタンスから少しずつ足場を移しつつ、じきにマニア向けの少部数雑誌になり果て、最終的には廃刊に追い込まれて行ったのである。合掌。 

小選挙区制は政策が類似した二大政党制につながると期待されていましたが、実際に生じたのは、自民党ネオリベ化(マジョリティ重視からマイノリティ=大企業・資本家・富裕層重視への転換)と、野党の過激化という両極化でした。*6

日本の投票率が低いこともよく問題視されますが、小選挙区制への変更後に低下が進んでいることは、選挙制度改革が「投票しても死票になるだけ」「投票先が見当たらない」と考える国民を増やしたことの証拠ではないでしょうか。

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さらに、日本では議員定数削減が改革とされて現在は465人ですが、ドイツは709人、フランスは577人、イギリスは650人です。議員1人当たりの有権者数は、日本22.8万人、ドイツ8.7万人、フランス8.2万人、イギリス7.1万人になります。議員数の減少も、国民の声を国政に反映させることには逆行します。*7

どう見ても選挙制度改革は失敗ですが、不思議なのは、

ことです。

小選挙区制度にすれば政権担当能力のある二大政党による政治が実現する」は、「企業が株主利益の最大化のためにコスト(人件費等)を最小化するようになれば日本経済は復活する」と同レベルの学者馬鹿による妄想だったことは明らかなので、「過ちては改むるに憚ること勿れ」。*8

seiji.yahoo.co.jp 

www.asahi.com 

選挙制度に関する学術研究は進歩したのに、この期に及んで政治学者が最も原始的な小選挙区制にこだわる意味が分かりません。*9

「現実が自分の理想通りになるまで失敗を繰り返そう」という進歩主義者の典型的思考(⇩)。

国民に責任を転嫁しています(⇩)。

dot.asahi.com

僕が小選挙区制を推進した理由は、政権交代を可能にするということと同時に、自己主張をしない、旗幟を鮮明にしないという日本人の国民性を変えるため。誰に対してもいい顔ができる中選挙区制では国民性は改まらない。国民が自立できるようになれば、政治家の資質、見識もおのずと改善されていくでしょう。  

小選挙区制は日本を滅ぼす─「失われた二十年」の政治抗争

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多くの場面を回顧してみると、けっきょくのところ小沢の本質はケンカ師的な政治家であり、世評とは反してヴィジョンはさしてなかったと評さざるをえない。

激しい対立劇のなかで、ケンカの主たる道具として現行の小選挙区比例代表並立制が用いられたのは紛れもない事実である。 

選挙のパラドクス―なぜあの人が選ばれるのか?

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選挙の経済学

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「決め方」の経済学―――「みんなの意見のまとめ方」を科学する

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参考①

イギリスでは二大政党への不満が高まる傾向にあります。

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参考②

ロシアの下院は日本と同じ小選挙区比例代表並立制です。定数(225+225=450)、議員1人当たり有権者数(25.4万人)、得票率と議席獲得率の乖離などがよく似ています。

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totb.hatenablog.com

*1:比例代表と比較すると、小選挙区では公明票自民党に流れていることが分かります。

*2:立憲民主党の候補者は59名でしたが。

*3:仮にこのような選挙制度が独裁的な途上国で行われていたとすれば、先進国から「民主政治を偽装するもの」と非難されるのではないでしょうか。

*4:例:不倫を批判して議員辞職を求める。

*5:ヒラリー・クリントン米大統領選挙で敗れた理由の一つに、民主党のエリートが移民やLGBTなどマイノリティ優遇に血眼になる余り、一般労働者を放置するどろこか差別主義者として敵視するようになったことが指摘されています。トランプが勝利したのは、民主党にも共和党にも見捨てられていたこれらの人々(forgotten men and women)に訴えたからです。

*6:野党の政治家は政策や実務能力よりも自民党批判がコアな支持者やマスコミに受けるため、いざ政権を担当すると、途端に無能をさらけ出すことになる。

*7:日本の中核市の要件が人口20万人以上。

*8:政治も経済も、米英かぶれの学者の言う通りに「改革」したら滅茶苦茶になってしまいましたが、彼らは一切責任を取りません。

*9:政治学者にとっては政権交代こそが唯一重要であり、国民の多様な声を議会に反映させることや、国民のマジョリティのための政治が行われることは二の次ということ。