Think outside the box

夏眠中|I shall return.

消費低迷の処方箋は消費税率引き上げ?

日興リサーチセンターのサイトに掲載された吉川・山口・大嶋によるレポートの「労働分配率は低下したが、企業は増大した利潤を設備投資には回さず、法人企業部門の剰余金が単調に増大している」との分析は的確ですが、

そのメカニズムと解決策には言及せず、政府に「責任ある形で、説得力のある税・社会保障のプランを明示」することを求めています。しかし、政府から出てくるのはほぼ確実に「消費税率引き上げ」なので逆効果です。

ですから財源については10%引上げ時の消費税増収分を充当することとしました。増収分を借金の返済と、言わばこれは社会保障の安定化でもありますが、子育て世代への投資等にバランスよく充当し、あわせて財政再建も確実に実現する考えであります。*1

企業が設備投資と人件費を抑制するメカニズムは、山口の古巣の日本銀行の調査月報1999年10月号「資本効率をめぐる問題について」で分析されていました。

現実に企業が資本効率を重視するという前提のもとで、わが国経済がどのような経済展開となるかについて、考え方を整理してみたい。前述のとおり、資本効率の向上をマクロ的に捉えると、資本生産性(GDP/資本ストック)および資本分配率(営業余剰/国民所得)の引き上げということになる。企業側からみれば、前者を達成するためには設備投資の抑制(資本蓄積の抑制)、後者については人件費抑制によって対応する可能性が高く、このところ本格化している「企業リストラ」はそうした企業行動を表したものと考えられる。

この予測通り、人件費は最上位層を除いて抑制が続いてます。*2

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内部資金の増大に設備投資が追随しないために内部留保が積み上がっていますが、その主体は株式(投資有価証券)と現金・預金です*3。資本効率を高めるためには設備投資よりも「財テク*4」が有効なためです。

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国内の設備投資が停滞する一方で、対外直接投資が激増しています(→株式)。

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速水日銀総裁(当時)が1999年7月の講演「日本経済の中長期的課題について」で予測した通りの展開です。

2番目の構造問題は、経済のグローバル化が進み、外国人投資家による株式保有も増加する中で、従来のボリューム志向に代えて、利益率を重視する経営姿勢がわが国企業に広まりつつあるということです。

資本移動が自由化された下では、海外の投資家だけでなく国内の投資家ですら、日本企業への投資を躊躇するということになると思います。

結果として、「企業リストラ」がほぼ完了した2002年度以降、資本効率(ROA)がマクロの成長率と乖離して急上昇しています。

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企業の資本効率重視の背景には「株主重視の経営」があります。

「とにかくROEというのが世界共通の企業の成績表なんだ。うちは10%を目指すんだ」と訴えた。

吉川・山口のレポートでも「製造業では著しく労働生産性が上昇したにもかかわらず、名目賃金はごくわずかしか上がらなかった」と指摘されていますが、単位労働コストの大幅低下が内部留保と配当金の激増の主因です。

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株主重視経営が消費低迷の主因なのに、なぜ暗に消費税増税へと誘導するのでしょうか。何らかの意図を疑った方がよさそうです。

president.jp

外国人投資家は日本企業に対し、欧米やアジアの企業と同水準のリターンを求める。相対的に潜在成長率が低いにもかかわらず、世界標準のROE自己資本利益率)が期待されるわけだ。
昨年まで、米国の名目GDP成長率5~6%に対し、日本はゼロ。パイが大きくならないのに、リターンは同じにせよ、というのは高すぎる要求である。*5

結果、株主への配当は増えても、労働賃金は増えない。つまり、配当期待という圧力が、労働分配率を抑えているのである。*6

デフレの真犯人 ―脱ROE〔株主資本利益率〕革命で甦る日本

デフレの真犯人 ―脱ROE〔株主資本利益率〕革命で甦る日本

補足

株主資本主義の本家・米英と日本のファンダメンタルズの相違(⇩)

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上昇気流に乗るのは誰だ!

上昇気流に乗るのは誰だ!

竹中 海外の投資家と議論すると、彼らからは必ずといっていいほど「移民を受け入れない限り、日本経済は信用できない」といわれます。

移民受け入れは安倍首相の国際公約です。

日本を、能力にあふれる外国人が、もっと活躍しやすい場所にします。

外国の企業・人が、最も仕事をしやすい国に、日本は変わっていきます。 

世界中から優秀な人材を日本に集める。高度外国人材の受入れに、我が国では、数の上限はありません。

(⇩ベトナム人とネパール人が急増中)

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すべては○○○のシナリオ通りに進行中。

*1:安倍内閣総理大臣の9月25日の記者会見

*2:詳しく言うと「高給取りの仕事を国内で増やさなくなった」です。

*3:1997年度末→2016年度末で利益剰余金+263兆円、現金・預金+76兆円、株式+207兆円

*4:対外直接投資も一種の「財テク」とする。

*5:[引用者注]安倍政権が期待する経済の好循環(企業増益が賃上げと設備投資増に波及)がいつまで経っても始まらないのは、同時に企業に資本効率の向上を求めているため。現在の日本のファンダメンタルズでは、この二つは原理的に両立しません。

*6:[引用者注]配当期待→賃金が増えない→パイが大きくならない