Think outside the box

夏眠中|I shall return.

婚活ブームでも未婚率が改善しなかった理由

これ(⇩)は、

  • マクロの問題はミクロの対処では解決できない(あるいは悪化させてしまう)
  • 「人間の心に最初から組み込まれた『プログラム』」は変えられない

ことの好例です。

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脳の働きや役割もまた生命進化の中で作り出されたものであって、それを人間の都合で勝手に変えることはできないというわけです。

近年の脳神経学や認知科学の進展は、人間の心に最初から組み込まれた「プログラム」こそが、いわゆる「人間性」の根本になっていることを次々に明らかにしています。

しかしながら、二〇世紀の社会科学はこうした自然科学的なアプローチを軽視して、イデオロギーで人間を考えるという大きな失敗をしてしまいました。

人間性はどこから来たか―サル学からのアプローチ (学術選書)

人間性はどこから来たか―サル学からのアプローチ (学術選書)

結婚の第一義的な意義が繁殖にあるのは自明である。

多くの社会で、配偶者の選択の基準は男女で異なる。新夫に求められる資質は、「よき提供者」たることで、将来経済的・社会的に高いステータスにつくことが求められる。一方、新婦に求められる資質は、「よき繁殖者と働き手」である。

家族システムの起源(上) 〔I ユーラシア〕〔2分冊〕

家族システムの起源(上) 〔I ユーラシア〕〔2分冊〕

起源的家族は、夫婦を基本的要素とする核家族型のものであった。

女性のステータスは高かったが、女性が集団の中で男性と同じ職務を持つわけではない。

人間が一夫一妻制の家族を形成するようにhard-wiredされている根本には「人間は大半の哺乳類のように母親だけで子育てできない→女が男に協力させる*1→結婚(JVの形成)」があると考えられます。

冒頭の記事で山田昌弘は 

経済的に男性に依存する、という従来型の結婚観を変えることができなかった。

出産で仕事を休んだり辞めたりすることがある女性が、収入面を男性に頼ってしまう。これは、個人として見ると合理的でもある」

と指摘していますが、女が「経済的に男性に依存する」のはhard-wiredされた「人間性」そのものなので、変えられなくて当然です。

この(⇩)アドバイスの問題は、

夫に経済的に依存する結婚を目指すのは無理。女性も共働きを目指すのが良い

女の労働供給が増える→賃金下落圧力が強まる→十分な経済力を持った男が減少する&女が男に求める所得水準が上昇する→マッチングが困難化する――ことです。

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女が結婚相手に要求する二大要素は

  1. 経済力(⇔金がない)
  2. 「雄」としての魅力(⇔キモい)

なので、男が「経済力とコミュニケーション」を高めれば結婚できる可能性も高まることは確かです。

結婚に対する考えを柔軟にすること。出会いの数を増やすため女性は積極的に外に出る。男性は経済力とコミュニケーションを身につけるために自分を磨く。これにつきるのだという。

しかし、男全体の所得水準は経済環境によって決まるため、自分磨きは社会全体の非婚化の解決策にはなり得ません。男の所得水準低下とは、椅子取りゲームで椅子の数が減らされているようなものなので、個々のプレーヤーがいくら努力しても、椅子に座れない人の数は変わらないのです。

また、コミュニケーション力を磨けというアドバイスも、

  • コミュ力は先天的要素が強い
  • コミュ力が低い段階でアプローチするとセクハラ認定されるリスクが高まっている(→後天的養成の困難化)

ため、あまり現実的ではありません。ハードル引上げ&ペナルティ厳格化は、コミュ力を持って生まれた人と持っていない人の格差を拡げるだけでした。

この(⇩)女へのアドバイスは疑問で、調査が意味しているのは、女の結婚確率を決めているのは「運」ではなく「選り好みの強さ(ハードルの高さ)」ということでしょう。出会う数が増え過ぎると選べなくなることは、以前に山田も指摘していたはずですが。

女性については「男性の好みは色々。ある研究者の調査では、女性の結婚の確率は、容姿や学歴、身長などで見ても差がなかった。美人だから結婚できるわけでもないし、容姿に自信がないからできないわけでもない。つまり、運によるところが大きい。だからこそ、出会う数を上げるしかない」。

婚活で女にアドバイスするべきだったのは、努力ではなく妥協(要求水準の引き下げ)が重要ということでした。*2

結局のところ、婚活ブームで未婚率が改善されなかったことは、

  1. 男女の働き方・所得の同等化
  2. 女の上方婚志向(非・下方婚)
  3. 社会の持続(人口再生産)

の三つは同時に達成できない、すなわち、未婚率を大幅に引き下げるためには、1か2を諦める構造改革が必要であることを証明したと言えるでしょう。*3

結婚観や格差社会など構造的な問題を解決しない限り、改善しないのでは」

フェミニズム的には正しい

  • 自分のキャリアアップと所得増
  • 自分と同等以上の経済力の男
  • いい男以外の男の排除

などの"have it all"の要望を叶えるために

  • 女の労働力化と男の所得水準の引き下げ
  • 男から女へのアプローチの厳格化

を進めたら、女の要求水準をクリアできる男が減少して未婚率が上昇~高止まりしてしまったということです。フェミニズム共産主義と同様の、亡国のイデオロギーなのです。

totb.hatenablog.com

totb.hatenablog.com

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正規雇用者の給料を下げて、夫に600万円払っているのなら、夫に300万円、妻に300万円払うようにすれば、納税者も増えます。

その結果がこれ(⇩)であることを理解できないのがフェミニストです。

「今、新卒女子の約半数が非正規労働市場に入るんですよ。これでは先が見えず、子どもなんて産めません。一方、正社員として就職できた女性はハッピーかといえばそうでもない。男並みに働いて疲弊するか、2級労働者として扱われるか。我々世代は、女がこんなに生きづらい社会しかつくれなかったのかと思うと、忸怩たる思いです」

*1:男には協力することで自分の子供が生き残る確率を高められるメリットがある。

*2:日本人は至る所で他者に対する要求水準を高めた結果、見返りのない努力を余儀なくされ、脱落者が続出しています。「ハードル上げ過ぎ症候群」が経済社会の停滞・衰退の原因です。

*3:2を諦めるとは、女に「プログラム」に逆らって下方婚させること、つまりはKKOとの強制結婚です。