Think outside the box

夏眠中|I shall return.

「北欧でも賃金に男女格差」~男女同等は少数派の最大幸福

朝日新聞にNYTの翻訳記事「なぜ?あの北欧でも賃金に男女格差」が掲載されていたので、

www.asahi.com

原文(⇩)を見てみます。

女の生涯賃金が少なくなる原因は、子供のためにキャリアが損なわれるためです。*1

Despite generous social policies, women who work full-time there are still paid 15 percent to 20 percent less than men, new research shows — a gender pay gap similar to that in the United States.

The main reason for this pay gap seems to be the same in both places: Children hurt mothers’ careers. This is, in large part, because women spend more time on child rearing than men do, whether by choice or not. *2 

子供を産まない女と男の賃金格差は事実上なくなっています。

Women who did not have children continued to increase their earnings at a rate similar to men.

出産した女と男の賃金格差をなくすためには、

  1. 夫が仕事を減らして家事・育児を増やす
  2. 家事・育児をアウトソースする

の二通りの手段があります。記事中では1.が推奨されていますが、これがなかなか普及しないのは、

  • 家事・育児を引き受ける夫は、家事・育児を妻に任せて仕事に全力投球する夫にキャリア競争で負けてしまうので、妻も望まない。
  • 人間の本性に反する。

ためです。

そもそも、乳を出せない男が子育てにおいて女と同じ役割を果たせないことは自明であり、実際、大半の哺乳類は母親だけで子育てしますが、人間は子が未熟な状態で生まれるために母子だけでは生きていくことが困難なので、男が食料調達や保護の役割を果たすようになったと考えられています。女は本能的に「自分が子育てするからお前はたっぷり稼いで来い」と男に求めているのであり、そのことは記事でも簡単に言及されています(⇩)。

There are different explanations for this, researchers say. Women may have intrinsic preferences to do more of this work, or couples could decide it’s most efficient to divide the labor this way. It could also be that social norms about traditional gender roles influence men and women to behave this way.

In surveys of Americans and Europeans, people tend to say that women should work part-time or not at all when they have children at home, and that men should earn money to support their families. 

しかし、動物にも育児放棄する母親がいるように、人間にも本能が壊れた「育児よりも仕事」の母親がいます。

ボーヴォワールは語る―『第二の性』その後 (平凡社ライブラリー)

ボーヴォワールは語る―『第二の性』その後 (平凡社ライブラリー)

私は幸運でした。私は出産や家事の義務など女性を隷属させるいろんなものをまぬがれていましたから。

個人的な面では、一番大事なことは働くことです。

最近になって、子どもを産むことは女性にとって厄介な罠だと思うようになりました。だから母親になるな、と女性に忠告したいのです。

そのような女も夫に「自分と同等以上*3」を求めるので、選択肢は2.のアウトソースになりますが、これは女女格差と表裏一体であり、米欧では人種・民族間の経済格差につながっています。

Ironically, many white women fulfilled White society’s expectation of feminine domesticity only through the domestic labor of their servants, who were women of color,” Nakano Glenn writes.

It was simple economics, and simple economics created different value systems that divide our priorities today. White women had money but wanted more time. Black and brown women needed more money. The limited ability of our men to find work that could solely sustain a family is a documented phenomenon and the subject of many a research papers, therefore our role as economic providers was critical for our family stability. 

なぜフランスでは子どもが増えるのか -フランス女性のライフスタイル (講談社現代新書)

なぜフランスでは子どもが増えるのか -フランス女性のライフスタイル (講談社現代新書)

かつての「社交」に「仕事」が代わった現在、一度は消えた「乳母」が復活して、高学歴高収入の母親たちを支えている。今日の「乳母」は、乳をやったりはしないが、出産後間もなく職場復帰していく女性の子どもたちの世話をしているのである。

エリート女の泣きどころは、エリート男しか愛せないってこと(笑)。男性評論家はよく、エリート女は家事労働してくれるハウスハスバンドを選べなんて簡単に言うけど、現実的じゃない。

以上から見えてくるのは、アメリカでも北欧でも多数派は夫婦分業の結果としての賃金格差を認めているにもかかわらず、少数派が自己利益のために騒ぎ立てている構図です。「高学歴高収入の母親たち*4」には低賃金で雇える「乳母」が必要だからです。

男女平等を国是とするスウェーデンでも、経済格差は拡大傾向にあります。

f:id:prof_nemuro:20180407091248p:plain

f:id:prof_nemuro:20180407091306p:plain

20~59歳の24%が移民(うち15%は西洋以外)です。*5

f:id:prof_nemuro:20180407111357p:plain

スウェーデンでは移民の「乳母」はそれほど多くはないものの、家事サービスや清掃、給仕、運転などは移民が顕著に多い仕事になっています。

上野千鶴子が分析しているように、日本でも男女平等政策が格差拡大に寄与しています。

ネオリベ改革がジェンダー平等政策を推進した理由はなんでしょうか?

答はかんたんです。女に働いてもらいたいから。

ネオリベ改革のくさびは、女性労働者を、エリートとマスのふたつに二極化する効果を持ちました。そして後者の労働条件が、かつてよりも悪くなっていったことは、90年代以降の状況を見てのとおりです。

リベラルは「マイノリティの地位向上」に熱心ですが、少数のエリート女もまたマイノリティであり、その地位向上のためにマスが奉仕する社会を作ることがリベラル/フェミニストの真の目的です。なぜなら、上野千鶴子を含め、彼女/彼らがエリートだからです。*6

ボーヴォワールや上野のような少数派の最大幸福を目指しているから、先進国は軒並み出生率低下と格差拡大によって持続不能に陥っているのです。*7

totb.hatenablog.com

totb.hatenablog.com

「低レベルの男は切り捨てられて当然」という観念は、「低レベルの労働者は切り捨てられて当然」という観念と根が同じです。男に厳しいリベラルは、一般労働者に厳しいネオリベラルと同類であり、この連合軍が日本という大きな共同体を破壊しています。

上野の「エリート女はエリート男しか愛せない」や「(非エリート)がフェミニズムの妨げになるかもしれないので、じゃまなものは足蹴にしなくてはならない」「ギャルゲーでヌキながら、性犯罪を犯さずに、平和に滅びていってくれればいい」などの言葉は、フェミニズムがエリート女の願望の

  • 夫は尊敬できるエリート男
  • 劣った女は下女
  • 劣った男は目障りなので存在を抹消

を"have it all"するための思想であることを示しています。勝ち組女のイデオロギーであるフェミニズムは、勝ち組のイデオロギーネオリベラリズムの一派閥なのです。

*1:このコラムニストは昨年の記事では"Children are particularly damaging to their careers"と表現していました。

*2:強調は引用者、以下同。

*3:ボーヴォワールサルトル

*4:その夫も共犯者。

*5:「西洋」はヨーロッパ(旧ソ連のヨーロッパ地域を含む)、アメリカ、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド

*6:それを正当化する(マスを騙す)思想がフェミニズムです。平等をスローガンに掲げながら、実態はエリートによる大衆の抑圧になる点で、フェミニズムリベラリズム共産主義と同じですが、それはこれらが人間の本性を否定する進歩主義の一種だからです。

*7:上野はネオリベ批判をしていますが、自分の「柔軟な働き方(⇔働かせ方)」や「夫婦共働きしなければ生活できない水準までの賃下げ」などの主張がネオリベラリズムそのものであることを理解しているのでしょうか。理解していないのであれば学者としての力量不足ですが、正体がネオリベ活動家であることのカモフラージュにも見えます。