Think outside the box

夏眠中|I shall return.

日本が没落した簡単な理由~投資しないから

日本の没落については様々な角度から説明できますが、その一つが、経済成長の原動力である投資を増やさなくなったためです。

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名目ベースでは、建設投資は一時はピークから半減し、機械設備とソフトウェアへの投資も1991年と1997年のピークを下回ったままです。

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投資が増えなかったのは、日本経済のリソース不足や銀行の貸し渋りのために「できなかった」からではなく「できるのにしなかった」から、例えるなら「食料は十二分にあるのに食べることを拒否したから」です。

2003年度以降、企業は内部資金が増加しても設備投資を増やさずに株式取得を積極化させていますが、これは日本市場を見限って海外市場に活路を求めたことの反映です。株主利益を最大化するためには合理的行動です。

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一方、政府も歴史的低金利で資金調達できるにもかかわらず、国民の圧倒的支持を背景に、公共事業を大幅に削減しました。財政健全化のための「無駄」の削減です。*1*2

日本が官民挙げて投資抑制に励んでいる間に、韓国は着々と成長を続けてきました。*3

一人当たり名目GDPで見ると、90年には日本の26%、00年は31%だったのが、16年は71%となっています。16年の一人当たり名目GDPを金額で見ると、日本の3万9000米ドルに対して、2万8000米ドルです。このように、急速に日本経済にキャッチアップしてきていることが分かります。

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1997年に日本は金融危機、韓国は通貨危機に見舞われ、新自由主義に基づく構造改革を進めた点は共通しますが、投資を増やして経済を成長させた点は異なります。この点では韓国人の方が正常(正気)です。

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日本人が総意として「(企業の)黒字を増やす/(政府の)赤字を減らす」ことを「投資して経済成長」よりも優先したことが、日本の没落の原因です*4。人体に例えるなら、スリム化のために十分に食事して健康な体を作ることを拒否して、痩せ衰えていくようなものです。*5

拒食症は「緩慢な自殺」と言われることがありますが、日本も「株主利益の最大化」や「プライマリーバランス黒字化」という強い思いがあるために、なかなか「治療」ができず、着実に衰弱死に向かっているわけです。*6

「やせたい」という強い思いがあるため、本人はなかなか治療したがりません。しかし、低栄養から様々な体の不調につながり、死に至ることもある病気ですから、治療の重要性を伝えることが必要です。*7

善悪の彼岸 (光文社古典新訳文庫)

善悪の彼岸 (光文社古典新訳文庫)

これまで地上で宗教的な神経症が発生したところでは、三つの危険な養生法が結びついていたことを確認できる。孤独と断食と性的な禁欲である。

付録①

日本の科学技術生産力の低下は目を覆うばかりだ。

要するに、リソースを削り現場を鍛えれば生産性が上がる、という誤った科学技術・文教政策のもとで行われた結果である。

togetter.com

付録②

香山健一の43年前のこの警告(⇩)は的中しましたが、

日本の自殺 (1976年)

日本の自殺 (1976年)

ほとんどすべての事例において、文明の没落は社会の衰弱と内部崩壊を通じての“自殺”だったのである。没落の原因は飢饉、洪水、地震、火災などの災害や外敵の侵略にあったのではなく、その社会の内部、その社会を構成する人間の内部にこそあった。

これほどあっけなく没落した日本がローマ帝国と同列に扱われることはあり得ないでしょう。

日本が将来没落するようなことになった場合、未来の歴史家たちは、ローマになぞらえて日本を“第二ローマ帝国”と呼ぶようになるかもしれない。

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⇧「改革」が本格化してからの転落が激しいことに注目。

*1:例:新東名高速道路を片側3車線にするのは無駄なので2車線に変更。

*2:「日本経済は量的縮小が不可避なので、投資は無駄」と言う人がいますが、これは「中年になると今後は衰える一方なので、QOLを高める努力をしても無駄」と言うようなものです。量的成長が無理でも質的成長は可能なのですが、頭のいい人にとっては「将来死ぬことは確実→現時点での健康増進は無駄→現時点で不健康に→死期が早まる」が合理的行動のようです。

*3:嫌韓派の予測では、韓国経済は既に崩壊しているはずですが。

*4:合成の誤謬/倹約のパラドクス

*5:日本人が全体として精神疾患になったようなもの。

*6:「強い思い」は、ネオリベ勢力によるマインドコントロールによるものでしょう。昔の聖職者が「○○しないと神が怒って世界が破滅するぞ」と脅して庶民をコントロールしたように、今のエスタブリッシュメントも「公共事業を減らして財政再建しないと日本が破滅する」などと国民を脅しているわけです。

*7:厚生労働省「みんなのメンタルヘルス」より