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フランスと日本の出生率の差

タイトルを見て「婚外子を奨励すれば日本の出生率も高まる」と早とちりする人もいそうですが、中身を読めばそうでないことが分かる記事です(⇩)。

ヨーロッパではキリスト教の影響もあって結婚/離婚の手続きが面倒なことが多かったため、結婚に代わる制度(フランスではPACS、スウェーデンではサムボ)の利用者が増えました。これらは日本の結婚と大差がないため、日本版PACSを創設する意味はありません。

また、1993年に1.66に低下した合計出生率が2010年には2.02にまで上昇したことを少子化対策の成果だと誤解している人も少なくないようですが、これは晩産化による一時的低下が元の水準に戻っただけです。*1

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フランスで注目すべきは、女の社会進出が出生率の大幅低下を引き起こさなかったことです。第二次大戦後に生まれた世代では、出産時期が高年齢化しているものの、最終的な出生率は微減にとどまっています。

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エマニュエル・トッドは日本にこのように(⇩)アドバイスしていますが、

世界の未来 ギャンブル化する民主主義、帝国化する資本 (朝日新書)

世界の未来 ギャンブル化する民主主義、帝国化する資本 (朝日新書)

命とか命を生み出すものは、無秩序、だらしなさ、ルーズさなのです。それが必要です。女性の地位が上がれば、国家が支えるものだということも受け入れなければなりません。完璧であろうとするのをやめることです。

もっと社会の秩序を緩くして、子供をつくる。お行儀が悪くなることをよしとしなければなりません。フランスでは子供の多数が婚外子です。若い人たちは深く考えずに子供をつくることができます。なぜなら国家が保育所を用意するからです。で、社会もそれを当然のことと考えるからです。

トッドが見落としているらしいのは、日本社会では(特に男の性的な面での)行儀の悪さと女の地位の上昇のトレードオフが激しいことです。

女にhard-wiredされた上方婚志向に日本人の完璧/潔癖志向が加わって対人関係のハードルが上がったため、クリアできない人(特に男)が"flight from human intimacy"して未婚率が高まっていると考えられます。

Aoyama believes the country is experiencing "a flight from human intimacy" – and it's partly the government's fault.

"A few people can't relate to the opposite sex physically or in any other way. They flinch if I touch them," she says. "Most are men, but I'm starting to see more women."

アメリカのマッチングサイトのビッグデータ分析からは、アジア系の男は「男らしさ」を欠くために人気がないことが判明していますが、

Compared with black, white and Latino men, Asian men receive fewer matches and messages from women on the dating site.

In a recent online survey of 900 Asian American men, Liu found that Asian men frequently feel stereotyped as lacking masculinity; they also said they’re perceived as undesirable and as too passive.

これは単に「そう見える」だけではなく、実際に「性的には冷淡というか、あまり性欲がさかんではない」、つまりは「オス度」のポテンシャルが低いためでしょう。そのため、男女関係のハードルが上がると、足切りされたり不戦敗に甘んじる男が大量発生してしまうわけです。*2

人間について

人間について

インディオ、ホッテントットといった民族は性的には冷淡というか、あまり性欲がさかんではない。そこで当然のことながら、これではいかんと性生活促進の規範がもうけられた。彼らはたとえば、黒人のように性欲旺盛な民族とはまったく違った男女結合に関するしきたりをもっているわけだ。 

海外の恋愛事情で「最も興味深かったのは日本だった」と語っている。

その理由は、「セックスレスな若者」と「草食男子」の存在だ。

性欲たっぷりのはずの年齢なのに「触られるのも嫌」という若者がたくさんいるという日本の話に、対談を聞いていた約1万人の聴衆は大爆笑。アメリカ人にとっては、それくらい想像を絶する現象なのだ。

Azizによると東京と正反対なのがアルゼンチンのブエノスアイレスらしい。ここでは、男女ともに軽く性交渉を持つ傾向があり、本命のほかにもセックスのみの友だちが複数いるのも珍しくないという。こちらのカジュアルさも、アメリカ人にとっては理解しがたいものだ。 

男の無秩序、だらしなさ、ルーズさ、行儀の悪さが許容されていた昭和の出生率は今よりも高かったわけですが、これらが許容されなくなった一因は女の社会進出です。なので、トッドのアドバイスの「社会の無秩序化と女の社会進出支援」は両立できず、少子化対策にはならないのです。*3

フランスの男の行儀の悪さは性欲の強さの反映

*1:データはフランス本土のもの。

*2:韓国、台湾、シンガポールなど他のアジア諸国は日本よりも出生率が低い。

*3:女の社会進出→社会のクリーン化→草食化→未婚化→少子化