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財政破綻を煽る経済分析の哲人の嘘

メガバンクのチーフエコノミスト財政破綻について大嘘を書いています。

国家財政が破綻するというのは、債務者である国が借金を返済できない状況である。

国債はその国の通貨建て金融資産の中で最も信用リスクが低い無リスク資産です。なので、市場実勢に合った金利を付ければ必ず銀行預金と交換(資金調達)できるので、借金を返済できない状態にはなりません。

仮に国債の買い手に何らかのトラブルが生じて円滑な消化ができない状況でも、中央銀行が(原理的には)無制限に買い入れることが可能なので、償還できない(デフォルトする)ことはありません。*1

そもそも政府は半永久的存在(ゴーイングコンサーン)なので、元本はいつまでもロールオーバーを繰り返すことが可能です。従って、利払費が税収や税収の源のGDP比でアンダーコントロールにあればOKであり、現在はその状況です。

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林慶一郎編集『財政破綻後』では、財政破綻を「インフレ率または名目金利が高騰して制御できなくなる状態」と定義していますが、

財政破綻後 危機のシナリオ分析

財政破綻後 危機のシナリオ分析

そのような状態とは、国全体の供給力が天井に達しており、国債発行による財政支出=需要の追加が実質成長ではなくインフレしか招かない、つまりはクラウディングアウトを引き起こす状態のことです。

1990年代から「国の借金」は増加する一方ですが、インフレ率と名目金利は日本経済が依然として財政破綻から程遠いことを示しています。

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民間と違って、国債発行残高の増大は財政破綻リスク(信用リスク)の増大には直結しないので、財政運営の目標を「債務対GDP 比の安定化」とすることも適切ではありません。

骨太の方針」では、財政規律の第一目標が世界標準である「債務対GDP 比の安定化」であることを明記する一方、日本だけが採用している「PB黒字化目標」の撤廃を検討すべきである。

国債残高が累増している主因は、企業部門が1997年秋の金融危機以降、資金余剰を続けていることです。

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金融危機の前後で、企業の資金フローは対GDP比で+10%pt.も変化(赤字→黒字)しており、それが政府の赤字拡大と家計の黒字縮小を引き起こしています。家計の悪化と政府の赤字は企業の黒字の裏返しということです。*2

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企業部門の黒字も、その内容が負債の削減(デレバレッジ)から金融資産の積み上げに変化しています。*3

金融危機から2004年までは、借入の返済が黒字の主因です。*4

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2005~08年は小康状態が続き、リーマンショック以降は、現金・預金と対外直接投資の資産増加が黒字の主因になります。

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現金・預金と対外直接投資の資産増加、貸出と債務証券の負債減少を合わせると、20年間で約400兆円、年平均約20兆円になります。毎年GDPの4%弱が国内の実体経済から消えていたことが、それを穴埋めするための財政赤字の拡大と経済成長率の低下を招いていたわけです。*5

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なので、いわゆる財政健全化をするのであれば、企業の現預金と対外直接投資を国内設備投資に向かわせて日本経済の供給力の天井を高めることが定石となります。*6

「経済分析の哲人」の

以上、考えてきたように、日本の財政について「本当の安心材料」は、大幅な税率引き上げと大幅な歳出減以外にはない。

では、国内需要の減少→設備投資減少→供給力の減少→財政破綻リスク増大となってしまう可能性大です。*7

totb.hatenablog.com

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おまけ

「哲人」の経歴は

京都大学で経済学修士号を取得した後、2000年4月に日本興業銀行(現みずほフィナンシャルグループ)でエコノミスト業務を始める。日本銀行RBS証券などで調査業務を歴任し現在に至る。財務省理財局「国の債務に関する在り方懇談会」のメンバー。

という典型的な勝ち組エリートコースですが、エリートがこのようなどうしようもないレベルの無知だから、日本の未来は絶望的なのです。

*1:為替レートを維持する等の理由で意図的にデフォルトを選択する場合は別。

*2:全部門の資金過不足の合計はゼロなので、非金融法人企業部門が対GDP比+10%になると、他部門の合計が-10%になる。

*3:法人税率引き下げが企業の貯蓄を促進することに留意。グローバル株主のために「法人税率引き下げ→企業が投資(赤字)から貯蓄(黒字)へ→財政赤字拡大→国有資産売却・公共サービス民営化」のシナリオを忠実に実行しているのが安倍政権です。

*4:「三つの過剰」の解消の一つ。

*5:反対に、企業は大増益に。

*6:グローバル株主の意向には反することになります。日本人はnaïveなので気付いていないようですが、そもそも安倍首相はウォール街のエージェントです。なので、このような政策に転換する可能性は限りなくゼロに近いでしょう。

*7:企業部門が借金を減らすことも政府部門が借金を減らすことも同じデレバレッジであり、実体経済に強烈な収縮圧力として働きます。民間部門が過熱していない状況での政府のデレバレッジは自殺行為です。