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夏眠中|I shall return.

[グラフ]資金循環~非金融法人企業

日本銀行「資金循環」によると、2017年度の非金融法人企業は28.7兆円の資金余剰で、20年度連続の黒字となりました。

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資金過不足を金融資産と負債の増減に分解して1998年度からの累積をグラフにします。*1  

2003年度までは負債の減少(デレバレッジ)、2004年度以降は金融資産の増加が資金余剰の主因です。

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金融資産の増加は、現金・預金、対外直接投資、対外証券投資の三つに集中しています。

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2008年のリーマンショックにこの三つの残高増加が加速しています。

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この現象について、財務総合政策研究所『フィナンシャル・レビュー』2017年第4号の特集「企業の資金余剰とコーポレートガバナンス」では次のように分析されています。 

近年日本企業が保有する現預金残高が大きく増大している背景には、借り入れ制約に直面する中堅中小企業ではいざという時のために現預金を保有するという予備的動機の影響が少なくない一方で、大企業では、国内市場でさまざまな投資機会に潜在的には直面する反面、それを結果的には実現できなかったことがあることを指摘する。*2

また大企業では、現預金の蓄積が将来の投資機会に備えた待機資金であるとしても、M&Aや海外直接投資が念頭にあり、国内の設備投資には回っていないことも明らかになった。*3

大企業が株主利益最大化経営に転換したことにより、

  1. 従前より高い利益水準が目標になる(→コスト削減圧力増大)
  2. 株主が求める高いリターンが見込める投資先が国内に不足
  3. 高収益率を求めて海外投資を積極化
  4. それでも使い切れない現預金が積み上がる

となっているわけです。企業の資金余剰と現金・預金の積み上がりは、消極経営の反映ではなく、株主の要求に応えて高度成長期並みの資産効率を達成しようとする積極経営の帰結ということです。*4

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参考

これはスペイン帝国中南米支配についての記述ですが、

アメリカス世界のなかの「帝国」 (アメリカス研究 (第10号(2005年)))

アメリカス世界のなかの「帝国」 (アメリカス研究 (第10号(2005年)))

帝国支配の強化は、本国の発展のために植民地社会を奉仕させることを意味する。具体的には、生産規模の拡大と生産活動の多角化と効率化による、より効果的な富の収奪である。直接生産者である労働者にとっては隷属的支配の強化となる。こうして支配と被支配の関係がさらに先鋭化し、先住民社会は困窮化と衰退化を進行させていった。その他の社会にあっても、社会格差は拡大し、大衆の社会生活は圧迫された。生産活動の分野では、生産者の管理強化、労働者の過剰収奪が常態化した。鉱山開発産業や輸出産業は発展するが、国内消費向け産業は停滞するという不均衡的発展が促進された。

新書アフリカ史 (講談社現代新書)

新書アフリカ史 (講談社現代新書)

先住民労働力が枯渇し始めると、新世界の外から労働力を移入する必要が生じた。解決の道はたった一つ、大西洋の彼方アフリカから奴隷を運ぶことだった。奴隷は現地で再生産する(つまり、女奴隷に子供を産み育てさせる)よりも、アフリカから運ぶ方がはるかに安くついたのである。

帝国=グローバル投資家、植民地=日本、先住民=日本人、奴隷=外国人労働者などと置き換えれば、日本で進行中の事態の本質が理解できます。*5*6

日本を、取り戻す」とは、植民地化を意味するダブルスピークだったということです。

*1:金融資産の増加と負債の減少が黒字 、金融資産の減少と負債の増加が赤字になる。

*2:福田慎一「企業の資金余剰と現預金の保有行動」

*3:中村純一「日本企業の資金余剰とキャッシュフロー使途―法人企業統計調査票データに基づく規模別分析―」

*4:そのための主な方策が①人件費抑制、②投資を国内から海外に、③法人税率引き下げ

*5:中国化する日本』という本がありましたが、むしろ「中南米化する日本」と言った方がよさそうです。

*6:アステカやインカがあっけなく滅ぼされた理由に①スペイン人の「悪意」が理解を超えていた、②スペイン人が持ち込んだ病原体への免疫がなかった、③スペイン人に協力する原住民がいた、などが挙げられていますが、日本の場合も①グローバル資本が「そこまでやる」とは日本人には想像できなかった(行き詰まった日本的経営を「物言う株主」が打破してくれると歓迎する日本人も少なくなかった)、②新自由主義などの思想に対する免疫がなかった、③アメリカで経済学・経営学を学んだ「洗脳世代」が、「日本を正しい姿に造り替える」ためにグローバル投資家に積極的に協力した、など酷似しています。