Think outside the box

夏眠中|I shall return.

[グラフ]トヨタの内部留保

小池参議院議員の言いたいことは分かりますが、この表現では賛同を得られないでしょう。

トヨタ自動車の連結B/Sの右側の利益剰余金19.5兆円を使い切ることは、左側の資産を現金化して19.5兆円社外流出させることを意味します。

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小池議員の言いたいであろうことは、連結よりも単体のB/Sに表れています。

トヨタ自動車の単体のB/Sは10年間でこのように変化しています。

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有形固定資産は微減ですが、投資その他の資産は+4.2兆円で、利益剰余金+4.0兆円とほぼ同額です。 

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投資有価証券が急増していますが、

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これは海外シフトを進めたことの反映です。

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一つ前の記事から再掲しますが、大企業がグローバル経営&株主重視経営に転換したために、

  • 従前より高い利益水準が目標になる(→コスト削減圧力増大)
  • 株主が求める高いリターンが見込める投資先が国内に不足
  • 需要と高収益率を求めて海外投資を積極化
  • それでも使い切れない現預金が積み上がる

となっています。これが、空前の利益水準にもかかわらず、賃上げと設備投資が低調な根本原因です。

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大企業に「もっと賃上げや設備投資にカネを振り向けよ」と要求するのであれば、大企業を国内支出の最小化に方向付けている要因と、方向転換させるためにはどのような制度改正が必要かまで指摘してもらいたいものです。それが政治家の仕事のはずです。

参考

日本企業全体では、内部留保の増加は現預金と対外直接投資の増加に対応しています。なので、「国内にも海外にも投資しないで現預金を積み上げるくらいなら、賃金として支払え」という主張は的外れではありません。

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totb.hatenablog.com

付録

高度成長から安定成長への移行には、投資主導から消費主導への経済構造転換がポイントになります。個々の企業では、付加価値を構成する人件費と営業純益の比率(ここでは人件費と営業純益の合計に占める営業純益の割合)が変化します。

日本では、第一次石油危機後前後の10%成長→4%成長への移行と共に、大企業の営業純益比率も30%→15%に低下しましたが、金融危機後には1%成長が続く一方で、営業純益比率は高度成長期を上回る水準にまで上昇しています。

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人件費抑制の一方で、配当金は激増しています。

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この企業行動の変化が日本経済の好循環を止め、不均衡を拡大させているのです。