Think outside the box

夏眠中|I shall return.

[グラフ]治山治水対策事業費

大雨による大水害が発生しているので、治山治水対策事業費の推移を確認します。

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2000年度以降を拡大します。

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一般会計と特別会計の純計も示します。

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こちらは国土交通省資料から。

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治山治水対策事業費削減といえば「コンクリートから人へ」の民主党政権のイメージが強いかもしれませんが(確かに事実)、トレンドは民意に支えられて1980年代から続いていました。安倍政権は民主党の「削り過ぎ」を若干戻しただけです。*1*2

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地方も含めた公共事業全体もほぼ同じ推移です。

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公共事業費の削減が建設業就業者を減少させたことも見て取れます。安倍政権下での就業者増加は建設業には及んでいません。

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1990年代の非自民政権と自社さ政権では、バブル崩壊後の景気対策で急増した公共事業費を削減することが「改革」とされ、その動きは橋本龍太郎政権で本格化しました。橋本内閣総理大臣は1997年1月に財政構造改革会議(橋本議長)を発足させ、3月には「財政構造改革五原則」を示しました。*3

  1. 財政構造改革の当面の目標は、2003年とする。財政健全化目標の閣議決定財政赤字GDP比3パーセント、赤字国債発行ゼロ)は、2005年までのできるだけ早期
  2. 今世紀中の3年間を「集中改革期間」とする。歳出の改革と縮減は、「一切の聖域なし」とする。「集中改革期間」中においては、主要な経費について具体的な量的縮減目標を定める。
  3. 当面の平成10年度予算においては、政策的経費である一般歳出を対9年度比マイナスとする。
  4. あらゆる長期計画(公共投資基本計画など)について、その大幅な縮減を行う。歳出を伴う新たな長期計画は作成しない。
  5. 国民負担率(財政赤字を含む)が50パーセントを超えない財政運営を行う。 *4

建設省運輸省等を統合して国土交通省にした省庁再編や、財政投融資制度改革も、財政支出を抑制することが重要な狙いでした。財務省が財政健全化一本鎗になったのも大蔵省改革の成果です。

大蔵省設置法第三条

大蔵省は、次に掲げる事項に関する国の行政事務及び事業を一体的に遂行する責任を負う行政機関とする。

一 国の財務

二 通貨

三 金融

四 証券取引

五 造幣事業

六 印刷事業  

財務省設置法第三条

財務省は、健全な財政の確保、適正かつ公平な課税の実現、税関業務の適正な運営、国庫の適正な管理、通貨に対する信頼の維持及び外国為替の安定の確保を図ることを任務とする。

2 前項に定めるもののほか、財務省は、同項の任務に関連する特定の内閣の重要政策に関する内閣の事務を助けることを任務とする。 
3 財務省は、前項の任務を遂行するに当たり、内閣官房を助けるものとする。 

橋本改革は、バブル崩壊後の景気対策で振り出しに戻ってしまった「国民運動」を再開したものと言えます。

私「……(これまでのように)なんでもかんでも“官”に頼るようではダメだね。すべてが自助努力をし、多少の不自由は耐え忍ぶという意識の変革が必要だから、行革は、国民全体の国民運動であり、意識革命運動ともいえる」*5

私「しかし、これからが本番だね。第1次答申でとにかく、突破口だけは開けたから、あとは、これをどんどん広げていくことだ。前進、前進、ただ前進あるのみ。日本の将来は豊かな文化国家、どの国にも負けない福祉国家になります」*6

与野党、経済学者、政治学者、マスコミに煽られて、国民が公共事業と土建業者叩きの革命運動に前進、前進、ただ前進した結果、水害を防げず、劣化したインフラを営利企業に運営させる「豊かな文化国家・福祉国家」が出来上がりました。*7*8*9*10

公共事業をどうするか (岩波新書)

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公共事業は止まるか (岩波新書)

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入門 行政の「事業仕分け」―「現場」発!行財政改革の切り札

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「事業仕分け」の力 (集英社新書 540A)

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これら⇧の結果がこれ⇩です。

朽ちるインフラ―忍び寄るもうひとつの危機

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*1:「メザシの土光さん」の質素倹約→小泉首相の「米百俵の精神」→民主党事業仕分け民主党は「自民党にはできなかった削減をやってみせる!」と意気込んだらやり過ぎてしまったわけです。

*2:外交や社会面が左派的だったために勘違いしている人が少なくないようですが、民主党の経済政策は中曽根~小泉と続いてきた新自由主義そのもので、コンセッション(公共施設等運営権)方式のPPP/PFIなどが安倍政権に引き継がれています。空港への導入の推進者は松下政経塾出身の前原誠司国土交通大臣でした。

*3:今読み返すと気が狂っているかのような内容ですが、当時はこれが正気と考えられていたのです。

*4:強調は引用者、以下同。

*5:[引用者注]水害対策も自助努力、甚大な被害が発生しても耐え忍ぶという意識の改革が必要です。

*6:[引用者注]物質的に満ち足りた人が、精神的満足を求めて出家するような心理です。日本人全体が「出家」したら、物質面の生活が崩壊してしまいますが、それが我々が望んだ世界だったということです。

*7:国土脆弱化の革命運動は、第一段階の「無駄な公共事業を削減する」から第二段階の「公共事業は無駄だから削減する」に進んでいます。

*8:「国境や国籍にこだわらない」リベラル・コスモポリタンの安倍首相が国土強靭化に不熱心なのは、グローバル投資家にとっては魅力的な投資案件ではないからでしょう。

*9:日本国民は国債残高を減らすために不自由を耐え忍び、安倍首相は国民の生命・安全よりもウォール街の投資家を儲けさせることを優先しているから、国土が脆弱化するのは必然です。

*10:この度の大水害を奇貨として「復興・防災のために外資の力を借りよう」「外国人の建設労働者をもっと受け入れよう」へと誘導するショック・ドクトリンには要注意です。