Think outside the box

夏眠中|I shall return.

共働きするために日本を江戸時代に戻そう

野田聖子・女性活躍担当大臣が、東洋経済のインタビューでとんでもないことを語っていました。

共稼ぎを増やすことには意味があるというより、もともと日本は共稼ぎの国。江戸時代でも夫妻ともに働き家計を担うのが当たり前だった。途中、政策の変更で、女性を働けないようにしてしまった。

従来の形に戻していく必要があるが、現状は険しい山道のような状態。女性活躍どころではない。 

共働きだったのは、

  • 生産性が低いために共働きしなければ生活が成り立たない
  • 一次産業主体のため職住近接だった

ためですが、男女が同じように働いていたのではなく、分業体制でした。結婚は子育てのための制度であり、出産は女にしかできないので、分業になるのは必然です。夫婦が全く同じように働くのであれば、女は出産できません。

家族システムの起源(上) 〔I ユーラシア〕〔2分冊〕

家族システムの起源(上) 〔I ユーラシア〕〔2分冊〕

起源的家族は、夫婦を基本的要素とする核家族型のものであった。

女性のステータスは高かったが、女性が集団の中で男性と同じ職務を持つわけではない。

人間性はどこから来たか―サル学からのアプローチ (学術選書)

人間性はどこから来たか―サル学からのアプローチ (学術選書)

労働の性的分業は、カルチャー・ユニヴァーサル、つまり人間社会に普遍的な慣習の一つである。

結婚の第一義的な意義が繁殖にあるのは自明である。 

第二次世界大戦後に専業主婦が増えたのは、

  • 生産性が上昇したため、夫の給料だけで一家が生活できるようになった
  • 産業構造変化→職住分離→家庭の外/内での夫婦分業になった(男がpaid work、女がunpaid workに特化した→特化によってさらに生産性が上昇した)*1

ためです。

産業構造や職場と住居の距離は現在のまま、働き方を江戸時代の形に戻すと、

  • 共働きしなければ家計が維持できない水準までの賃金低下
  • 夫婦分業の否定→そもそも結婚しない→少子化*2

つまりは、貧乏暇なしの少子化社会になってしまいますが、これは現在進行中のことです。

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野田大臣は

加えて岩盤が硬く崩すのが難しいのは、男性たちにある大黒柱意識だ。

とも語っていますが、男の大黒柱意識はかなりcultural universalです。

ワーキング・クラスの男性は「男としてのプライド」を非常に大切にする。だが、それがいま奪われつつある。これまでプライドを支えてきたのは、一家の稼ぎ頭としての立場だった。一般的に言って、男性は(エリートだろうとワーキング・クラスだろうと)、自分の収入を男らしさの基準と考える傾向がある。

“Work organizations (in Sweden) tend to be organized around gendered principles, that assume that women are caregivers, men are breadwinners, and that work should come first,” Haas says. “These assumptions tend to discourage women from management positions and men from taking leave.”

In fact, Sweden has one of the most gender-segregated workforces in Europe, and women take 75% of parental leave and work part-time more than three times as often as men. Women still do the bulk of household work and take significantly more time off with sick kids than fathers do.  

女にとっての夫の価値は「自分と子のために稼いでくる」ことなので、その役割を果たせない男に価値はありません。男もそのことを知っているから大黒柱意識が「岩盤」になっているわけです。安倍首相のドリルによって硬い岩盤を崩したら、家族が崩壊してしまいます。*3*4*5

Sociologists in the US have concluded that men who stay at home and don’t fulfil the stereotype of the male breadwinner don’t get extra brownie points for their hospital corners and nurturing skills.

In fact, they are at greater risk of divorce than men who go out to work full-time. Women who stayed at home did not experience the same increased likelihood.  *6

エリート女の泣きどころは、エリート男しか愛せないってこと(笑)。男性評論家はよく、エリート女は家事労働してくれるハウスハスバンドを選べなんて簡単に言うけど、現実的じゃない。

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人類は何を失いつつあるのか: ゴリラ社会と先住民社会から見えてきたもの

人類は何を失いつつあるのか: ゴリラ社会と先住民社会から見えてきたもの

人間の身体能力や生理的欲求のあり方を考えると、一夫一妻というのは本来、人間には向いていない。しかし、社会的、文化的に考えれば、ひとりの男性を自分や子どもに関連づけて、男性同士の連帯を引き出し、自分たちの保護と子どもの養育に当たらせるにはいいシステムです。一夫一妻はそのための女性の戦略だったのではないかと思います。

野田大臣や安倍首相の「女性活躍」が上野千鶴子の主張とほとんど同じであることは、安倍政権が保守/右派ではなくリベラル/左派であることの証拠です。実際、「女性活躍」をいち早く進めたのは共産主義国と北欧諸国、つまりはコミュニズムフェミニズムの国々でした。*7*8

世帯を養える賃金を男1人に払う家族給に支えられた 「男性稼ぎ主モデル」こそ、女性差別の根源なのですよ。

正規雇用者の給料を下げて、夫に600万円払っているのなら、夫に300万円、妻に300万円払うようにすれば、納税者も増えます。

ナチス的な意味での"Arbeit macht frei"がリベラルの本質です。*9

totb.hatenablog.com

*1:デンマークでは女の通勤距離は男よりも3割短い。

*2:分業しないのであればペアを組む意味もありません。

*3:家族の破壊といえばポル・ポトです。

*4:安倍語録:いかなる岩盤も、私の「ドリル」の前には無傷ではいられません。

*5:「女が男に大黒柱を期待する→男が勤勉に働く→職場の“レギュラー”が男で占められる」なので、女が男を押しのけて“レギュラー”になりたいのであれば、本能に逆らって男に大黒柱を期待しなければよいわけです。野田大臣のような女は「キャリアも・子供も・自分と同等以上に外で働く夫も」を"have it all"することが難しいことを不公平の証拠としていますが、ほとんどの男は「キャリアも・子供も・自分と同等以上に外で働く妻も」を"have it all"していないどころか、そもそも要求していません。男女不公平と騒ぐ女たちは、自分たちが過大な要求をしていることに気付いていないのです。

*6:強調は引用者、以下同。

*7:江戸時代の働き方を取り戻す点では復古主義なのかもしれませんが。

*8:スウェーデンは「世界初のフェミニスト政府」を名乗っています。

*9:リベラルの経済政策はネオリベラル。