Think outside the box

夏眠中|I shall return.

日中米の名目GDPとコーポレートガバナンス改革

日中米の名目GDPを市場為替レートで円換算すると、2017年の概数は日本550兆円、中国1400兆円、アメリカ2200兆円です。

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10年前と比べると日本+3%、中国3.3倍、アメリカ1.3倍、20年前と比べると日本+3%、中国11.8倍、アメリカ2.1倍です。

プラザ合意後、アメリカのGDPは日本の約2倍程度でしたが、現在では4倍にまで差が拡大しています。中国は2010年に僅差で日本を上回り、あっという間に2.5倍です。

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日本の成長停止の主因は、企業(特に大企業)が株主重視経営に転換したことにあると考えられます。

株主重視経営の建前はこの通りですが、

企業の売上高をピザと考えましょう。取引先、社員、債権者、政府、株主という順で、ピザを食べていきます。株主の順番になったとき、ピザが残っていなければ、株主が満足しないだけではありません。その前の誰かがピザを食べそこなった可能性があります。株主の順番になったとき、ピザが残っていれば、株主以外の利害関係者は満たされています。株主がおなかいっぱい食べることができれば、全員が満足しているといえます。

コーポレートガバナンスの強化によって、日本企業はこれまで以上に株主重視の経営をすることになります。

これが机上の空論に過ぎないことは、現実が物語っています。株主を満足させるために、支出削減、コストカット、人件費抑制、法人税減税などの支出抑制・デフレ圧力が強まり、日本経済の成長を止めてしまったわけです。

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1999年7月に日本銀行の速水総裁(当時)が講演でこのように警告していましたが、

2番目の構造問題は、経済のグローバル化が進み、外国人投資家による株式保有も増加する中で、従来のボリューム志向に代えて、利益率を重視する経営姿勢がわが国企業に広まりつつあるということです。

わが国の資本の生産性が低下を続けているということは、資本の所有者が期待するリターンが低下し続けているということを意味し、先ほど申し上げたROA――これは、経済全体が生み出す付加価値の企業と家計の取り分が変わらないと前提すれば、資本の生産性と同じになるのですが、――その趨勢的な低下とも符合する動きです。このことは、投資家からみれば、「日本では資本が効率的に利用されていない」ということに他ならず、資本移動が自由化された下では、海外の投資家だけでなく国内の投資家ですら、日本企業への投資を躊躇するということになると思います。

日本企業はグローバル投資家の期待に応えて資本効率を高めるために、人件費を徹底的に抑制するとともに、投資の海外シフトを進めました。高度成長期を上回る資本効率を実現するためには、強烈なコストカットと高成長地域への投資が必要だからです。*1

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過去20年間で激増したものと全く増えないものの対比が鮮明です。

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失われた〈20年〉

失われた〈20年〉

「企業は、株主にどれだけ報いるかだ。雇用や国のあり方まで経営者が考える必要はない」

「それはあなた、国賊だ。我々はそんな気持ちで経営をやってきたんじゃない」

94年2月25日、千葉県浦安市舞浜の高級ホテル「ヒルトン東京ベイ」。大手企業のトップら14人が新しい日本型経営を提案するため、泊まり込みで激しい議論を繰り広げた。論争の中心になったのが「雇用重視」を掲げる新日本製鉄社長の今井敬と、「株主重視」への転換を唱えるオリックス社長の宮内義彦だった。経済界で「今井・宮内論争」と言われる。 

大企業が「国民経済のための経営」から「グローバル投資家のための経営」に転換したために、企業が日本経済を成長させるエンジンから、養分を吸い尽くすがん細胞のようになってしまったわけですが、安倍首相は2015年9月29日には「金融を中心とするビジネス関係者との対話」で

私の改革リストのトップアジェンダは、コーポレートガバナンスの改革である。繰り返し、そう申し上げてきました。

2017年9月20日にはニューヨーク証券取引所

まず、日本企業の体質を変えなければならない。コーポレート・ガバナンス改革を、私は、最も重視しています。

企業が、資本コストを意識して果断に経営判断を行うよう、コーポレート・ガバナンス改革を更に前に進めていきます。

と、グローバル投資家の立場から、企業に「これまで以上に株主重視の経営をする」ように圧力をかけています。

安倍首相は日本国民の代表というよりも、ウォール街代理人と言った方がよさそうです。*2

その帰結はトッドが予測しています。

toyokeizai.net

保護主義の世界では、民主主義システムの政権担当者は、生活水準と中産階級が大変重要だと考えます。一方、現在の民主主義の危機は自由貿易の危機です。エリートは人々の生活水準に関心を持とうとしません。現在の民主主義は、ウルトラ・リベラルな民主主義であり、エリートが人々の生活水準の低下をもたらしているように見えます。*3

不平等が広がるにつれて、多くの人々の生活水準は下がり始めています。もし、支配者階級が生活水準の低下を促し続けるなら、民主主義は政治的にも経済的にも生き残れない。独裁国家になるのは避けられないでしょう。

*1:企業部門が資金を過剰に吸い込むために、家計と財政が資金不足に陥っています。

*2:これだけはっきり言ってくれているのだから、分からない国民に問題があるでしょう。

*3:強調は引用者。